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About Our Research

​研究内容

 当研究室では、無機機能材料の合成と構造制御を基盤に、発光・光学応答をはじめとする多様な物性を創発させる材料設計研究を行っています。材料特性は組成だけで決まるのではなく、結晶構造、欠陥(点欠陥・配位環境)、微細組織(粒径・粒界)、さらにはナノスケールの相分離や析出相などの階層構造に強く依存します。そこで、プロセス条件・構造・物性の相関を実験的に整理し、再現性の高い設計指針へ落とし込むことを重視しています。

 材料創製では、溶融法、固相反応法、フローティングゾーン(FZ)法、放電プラズマ焼結(SPS)法、ゾルゲル法などを目的に応じて使い分け、結晶成長、緻密化、結晶化制御、ナノ結晶析出、粒界・欠陥制御といった微細構造エンジニアリングを行います。得られた試料は、分光(吸収・拡散反射・PL/PLE)、発光寿命、量子収率、シンチレーションや各種線量応答(RPL/OSL/TL など)といった評価を組み合わせ、機能発現の機構理解と高性能化を同時に進めます。

 応用は、フォトニクス材料、各種センシング・計測材料、医療・産業分野の機能材料まで幅広く、放射線計測用材料(シンチレータ/ドシメータ)はその展開先の一つとして位置付けています。

Radio-photoluminescence (RPL) phenomenon in heavy-element glass materials​

イメージングや飛跡検出用途に適用可能な重元素系かつ低フェーディングのラジオフォトルミネッセンス(RPL)材料の開発

 X線により生成した励起電子の一部が、発光中心に移動する途中で捕獲準位に捕らえられる場合があります。この状態にある材料に熱や光で刺激を与えると捕獲されていた電子が伝導帯へ再励起され、発光中心で再結合することで発光します。再励起源に熱を使用した場合を熱蛍光(TSL)、光の場合を輝尽蛍光(OSL)と呼びます。後者のOSL現象を利用した個人被曝線量計は国内でもよく利用されています(長瀬ランダウア社製・ルミネスバッジ)。その他、我が国で広く普及しているのはラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象を利用した個人被曝線量計(千代田テクノル社製・ガラスバッジ)です。RPL現象は放射線を照射するとその照射量に応じて新たな発光中心(RPL中心)を生じるというもので、ガラスバッジでは一度生成したRPL中心は熱によって解放するまでは安定して存在することから、繰り返しの読み出しを行うことができます。一方で、このRPL中心は母材の組成によっては非常に不安定です。浅い捕獲準位に捕らえられた電子が室温程度の熱エネルギーで再励起されることによってAg^(2+)がAg^(+)へと価数を変化し、強いフェーディングを起こす場合があるためです。そのため新規材料開発の際には繊細な材料設計が求められます。

RPL and Radiochromic phenomenon on gold in inorganic materials

AuによるRPLおよびラジオクロミック現象の理解

 これまで報告されているRPL中心の候補となる元素は、Mn、Cu、Ag、Eu、Sm、Bi、Pbなどの限られた元素であり、これらの元素がRPLを発現する条件に適応する母体材料を選定する必要があるため、新規RPL材料開発におけるボトルネックの一つとなっています。これを緩和するために、私は新たなRPL中心の探索を行っており、近年、AuがRPLを示す新たな元素であることを発見しました。(右図)また、特性評価を進めていくなかで、ホスト材料によっては顕著なラジオクロミック現象が発現することもわかりました。(図中、左)一方で、RPL現象やラジオクロミック現象の発現に適した材料系やその条件などの多くが未だ明らかではないため、現在精力的にAu元素が示す上記現象についての調査・理解を進めています。新たにAuをRPL中心として確立することで、上記制約の緩和とX・γ線に対する感度の向上が見込めます。

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Glass synthesized by the SPS method

シリカガラスの低温作製と放射線検出器への応用

 放電プラズマ焼結(SPS)法は機械的な加圧とパルス通電加熱とによって、焼結および接合、合成を行う加工法です。焼結の際、従来的な熱的および機械的エネルギーに加えて、パルス通電による電磁的エネルギーや試料の自己発熱および粒子間に発生する放電プラズマエネルギーなどを利用します。そのため、短時間かつ低温での処理が可能な手法です。

 シリカガラスは真空紫外から赤外域までの高い透過率を有し、低熱膨張性、化学的耐久性に優れることから放射線計測用の母材として期待できます。加えて、ガラスとしては比較的高いエネルギー輸送効率を示します。しかし、シリカガラスの軟化温度は1774 ℃と高く、従来の溶融法では高温製造プロセスを要する難点を有します。我々はSPS法を用いることで、1300 ℃での焼結により軟化温度より低い温度においてシリカガラスの作製に成功しています。

 本手法で作製した発光中心添加シリカガラスは優れた発光特性を示し、放射線照射時にも高い発光量が得られることがわかっています。(図参照)

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Glass synthesized by the Floating Zone method

X・γ線検出用重元素系ガラスシンチレータの開発

 ガラスをX・γ線用シンチレータとして用いるうえで障壁となっている要因の一つに実効原子番号(Zeff)の低さがあります。ガラスは3または4配位の酸素多面体がそれぞれの頂点を共有してネットワークを形成し、ガラス化します。このような単独でガラスネットワークを構築し得る酸化物は網目形成酸化物と呼ばれ、SiO2やP2O5、B2O3などの軽元素がほとんどです。ガラスはこれらの酸化物が構造の基軸となっているため、実用シンチレータ材料の多い単結晶と比較すると必然的にZeffは低くなってしまいます。この問題を解決するためには材料組成中に重元素を含ませ、高いZeffを持たせる必要があります。高いZeffを有すれば、X・γ線を効率良く吸収でき、検出効率は向上しますが、シンチレータとして実績のある希土類やHf等の重元素で構成されるガラスを作製するためには高融点な重元素酸化物を溶融することができる溶融炉が必要です。

 上記の課題の解決のため、我々はFZ法集光型赤外線加熱炉(図上)を用いたガラス作製法(FZ溶融急冷法)を採用しています。FZ法は本来、単結晶育成に用いられる手法ですが、合成時の試料の取り回しを工夫して溶融・急冷する事で、図下(左、中)のようにガラスを作製する事が出来ます。

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Department of Electrical Engineering, Faculty of Engineering, Tokyo University of Science (TUS)

〒6-3-1 Niijuku, Katsushika-ku, Tokyo 125-8585, Japan

Tel 090-7032-7054

​E-mail shiratori at rs.tus.ac.jp

 
 
 
 
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